3月度その11:覆水は何故盆に帰らないのか! 追記あり
覆水は何故盆に帰らないのか!
ここでジョージ・ガモフ(1904-1968:ロシア系ユダヤ人、現ウクライナ・オデッサ生まれ、レニングラード大学を卒業後、コロラド大学へ移る、ビッグバン理論の提唱者、多くの児童向け科学読本ガモフ全集を書く、全集の中で5°Kの宇宙背景放射を予言したのは余りにも有名、実際には偶然1965年3°Kで発見された⬅ペンジアス&ウィルソン)、このガモフが書いた「1,2,3・・・無限大」(初版1951白楊社)という全集に出ているランダムな熱運動なるものを、ご紹介を致したく
ガモフは言う:
何故覆水は盆に帰らないかって?それは単に確率の問題なのである
横15mx縦20m x 高10m程度の部屋を考え、中央に空気を通すスクリーンを置いたとしよう、部屋の中には約10**27個の空気分子が存在する、そして各空気分子はランダムな熱運動をしている
この空気分子がある一瞬同時にスクリーンの片側に集中する確率は、
(1/2)**10**27 [1/2の10乗の27乗] である
一方、空気分子は0.5km/秒で熱運動していて部屋の隅から隅まで行くのに0.01秒しか掛からないから、この部屋はスクリーンを境として毎秒100回入れ替わり得るのである
従って、スクリーンの片側にすべての空気分子が移動する組み合わせが起こるまでの待ち時間は、
10の299,999,999,999,999,999,999,999,998乗 秒なのである
ここで現在の宇宙の年齢は10の17乗 秒程度であるから、
約18,0000,0000,0000,0000,0000,0000回、即ち現在の宇宙の年齢の18兆の1兆倍くらいの時間を掛ければ1回出現する確率が出てくるのである
これは極めて低い確率であるのは言うまでもない、確率が極めて低い状態というのは規則性が極めて高い状態なのである
ガモフは言う:
Aに熱い空気がありBに冷たい空気があったとする、やがて部屋の空気は混ざり合い温度は一定の値となる
逆に混ざりあった一定温度の空気が突然冷たい空気と暖かい空気に分離される、というのは(これは全体エネルギー総和に変化が無ければ有り得るのだけれども、上でも述べたように)、極めて低い確率なのであって、常に部屋の温度は一定となる確率が最大なのである
ランダムな熱運動は常に確率が高い状態へ移行し、何も起こらなくなった時が平衡状態であって、熱的死とも言う
系は秩序のある世界(Aに熱い空気,Bに冷たい空気)から無秩序(これが最も確率が高い)世界へ時間と伴に移行する、これを系のエントロピーは増大する、と言う
追記:2020/04/02
しかしながら、生命体を考えた時、これはどう考えても秩序の世界であり規則性の世界である(DNAの螺旋構造を見よ!)、宇宙のエントロピー(無秩序性)は増大する、と言われても、では何故生命体が出現したのか?が分からない、生命体は出現し進化し構造化し規則化しているのだ、明らかに(この項は私見です、ガモフ先生ではありません)
私は、中学の時にガモフ全集の一冊を買ってもらい、むさぼり読んだ、面白かった、分かりやすかった、教科書よりズット
もちろん全てが分かった訳ではない、が、何が分からないのかが良く分かった気がした、このキーワードが分からないのだ、それが分かれば、その時にはこのページ全体が分かるのだろう、と思った
以上です
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