5月度その12: ノーベル賞シリーズ ➡ 重力波の検出!
ノーベル賞シリーズ ➡ 重力波の検出!
* さて、シリーズ最終回は重力波の検出です
* まずは、電磁波ビームを出す中性子星パルサーと電磁波ビームは出さない中性子星の連星である「ハルス-テイラーの連星パルサー」[PSR B1913+16 - Wikipedia] から行きます
アレシボ天文台の305mのアンテナを用い、マサチューセッツ大学のハルスとテイラーはパルス状の電波放射を検出し、その源が高速で自転し、強く磁化した中性子星のパルサーである事を発見した(PSR B1913+16)。この中性子星は、自転軸の周りを1秒間に17回転しており、パルス周期は59ミリ秒であった。
やがて、このパルサーの軌道周期が変動している事に気付き、
彼らは、パルサーが別の恒星と連星系を作っている事を突きとめた。 このパルサーと伴星(中性子星)は、どちらも共通重心の周りの楕円軌道を公転している。起動周期は7.75時間で、2つの中性子星はほぼ同じ大きさ(直径20km)と質量(太陽質量の約1.4倍)と推定されている。
そして、
この連星系が発見されて以来、軌道は減衰(周期が短くなり、接近している、という事)しており、これは、アインシュタインの一般相対性理論が予測する重力波のために起こるエネルギーの損失と正確に一致する。
PSR B1913+16の公転減衰。放物線は、一般相対線理論から予測される公転周期の変化で、赤い点は観測値。
重力波放出による比較的大きなエネルギー損失のため、軌道周期の減少速度は、1年当たり76.5マイクロ秒、軌道長半径の減少率は、1年当たり3.5mとなり、寿命は3億年程度と計算されている。
この分析により、一般相対性理論に従い、この連星系は重力波を放出してエネルギーを失っていることが強く示唆され、彼らは1993年ノーベル物理学賞を受賞した
間接的ではあるが、人類史上初の重力波観測&検出であった
* そしてLIGOの出現である [重力波の初検出 - Wikipedia]
2015年9月14日アメリカの重力波望遠鏡LIGOは、重力波の波形を検出した(GW150914)。これは、36太陽質量と29太陽質量の連星ブラックホールが互いを周回し、合体し、ひとつのブラックホールが作られた時に現れる重力波の波形(一般相対性理論による予言)とよく一致していた 。これは、連星ブラックホールが合体する様子が初めてとらえられたものであり、恒星質量の連星が存在すること、それが現在の宇宙年齢の間に合体しうることを示すものであった。
LIGOはレーザー干渉計なのだけれども、その精度には度肝を抜かれる
このブラックホール合体によって生み出された重力波は、時空のさざ波として地球に到達した。これによって、LIGOの長さ4キロメートルの腕は、陽子の大きさの1/1000だけ伸縮した。これは、太陽にもっとも近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリまでの距離が髪の毛1本の太さ分伸縮したことに相当する。
LIGO ワシントン州ハンフォード観測所の北アーム By Umptanum
現在、LIGOはルイジアナ州とワシントン州の2ヶ所に設置され、同時に同じ信号を受信した場合を正しい信号とし、ノイズによる誤検出を防いでいる
GW150914の検出は、全く新しい重力波天文学の幕開けとして記念すべきものであった。重力波検出以前は、天文学者は電磁波 (可視光、エックス線、マイクロ波、電波、ガンマ線など)と粒子 (宇宙線、恒星風、ニュートリノなど) を用いて宇宙を観測していたが、このことによる限界も生じていた。すなわち、電磁波や宇宙線を発しない天体現象や天体は多くあり、これらは従来の観測では捉えることができなかったのである。
By NASA/Ames Research Center/C. Henze
Wikiによれば:
GW150914以降、2個目の重力波イベントGW151226が検出され、2017年8月までの観測期間で7回検出された、また、LIGOをさらにアップグレードさせる計画があり、これによって信号雑音比は2倍向上し、GW150914のような重力波イベントが検出できる宇宙の体積(検出可能空間という事)は一桁増加すると見込まれている。
2020年に完了するアップグレードによって、LIGOは年間1000回のブラックホール合体を検出できると見積もられている。
とある
2015年9月の段階で実稼働していた重力波望遠鏡はLIGOのみであり、LIGOが人類史上初となる重力波の直接観測&検出(GW150914)の栄誉を担う事となったのである、そして「LIGO検出器および重力波の観測への決定的な貢献」により2017年ノーベル物理学賞は、レイナー・ワイス、バリー・バリッシュ、キップ・ソーンに与えられた。
* さて、ここで話は飛ぶが、自由電子レーザーによる中性子星パルサーの電磁波ビーム生成モデルに少し触れよう
パルサーが自転により周期的に発光する原理
上図で、電子流が磁極を中心に中性子星表面を回転しているとしよう、そうして磁極部分で電子流は凹凸に波打ち、まるで王冠の縁のような形状になる、とする
このような王冠の縁のうねりに沿った電子流が磁極部に発生すると、電子流が上昇する時には加速度を受けて自由電子レーザを形成し、これが電磁波ビームとなるのである
ここで王冠のうねりを生成する原因は、磁力線の強弱にある
こうして自由電子レーザーが磁極部に構成され、電波からガンマ線までの電磁波を放射する事が可能となる、とするものである
このモデルは、もっと磨く必要はあるが、まず第一歩としてはこんな所であろう
* 長くなりますが、受賞者の経歴を簡単にリストしますと:
● ジョセフ・テイラー(79歳)
1941年フィラデルフィアに生まる。ハーバード大学で学位をとり、ハーバード大学で研究した後、マサチューセッツ大学の天文学の教授となり、1974年、ハルスとともにアレシボ天文台で連星パルサーPSR B1913+16を発見した。1980年プリンストン大学へ移る
ジョゼフ・テイラーはティーンエイジャーの頃にアマチュア無線免許を取得し、それがきっかけとなって電波天文学に興味を持つようになった。彼は、アマチュア無線の微弱信号通信の分野でよく知られており、2010年4月にはアレシボ天文台の電波望遠鏡を用いて世界中のアマチュア無線局と、音声、モールス通信、デジタル通信による月面反射通信の運用を行ったことが特筆される。
ジョセフ・テイラー By
● ラッセル・ハルス(69歳)
1950年ニューヨークに生まれる。マサチューセッツ大学で学び、1975年に物理学博士号を取得する、ここでジョセフ・テイラーと伴にプエルトリコのアレシボ天文台を使ったパルサーの大規模な探索を行い、ここで初めて連星パルサーが発見された。
ラッセル・ハルス By ENERGY.GOV
● レイナー・ワイス(87歳)
1932年ドイツ・ベルリンで生まれる。父親がユダヤ人であった為、アメリカに移りMITで博士号を取得している
ワイスは、宇宙のバックグラウンド放射の特徴測定と、干渉計による重力波観測という2つの基礎物理学の研究を生み出し、それらの発展に貢献した。
宇宙マイクロ波背景放射スペクトラム測定の草分けで、NASAの宇宙背景放射探査機査機 COBE の科学アドバイザー兼 共同設立者となった。
また、干渉計による重力波観測も考案し、アメリカ国立科学財団のレーザー干渉計重力波観測所 LIGO の共同設立者となった。
レイナー・ワイス By Michael Hauser in December, 2006.
● バリー・バリッシュ(84歳)
1936年オクラホマで生まれる。両親はポーランドからのユダヤ系移民。カルフォルニア大学バークレー校で物理学学士(1957年)と実験的高エネルギー物理学のPh.D(1962年)を取得した。 1994年、レーザー干渉計重力波観測所 LIGOの主任研究員となり、1997年にはディレクターとなった。
バリー・バリッシュ By R. Hahn
● キップ・ソーン(79歳)
1940年ユタ州で生まれる。カルフォルニア工科大学で学んだあと、プリンストン大学で博士号を得た。1967年からカリフォルニア工科大学の助教授、1970年に理論物理学の教授、1991年からファインマン教授職を務めている。
重力理論、ブラックホール、宇宙論の歴史と理論を解説した一般向けの著書『ブラックホールと時空の歪み アインシュタインのとんでもない遺産』によって有名になった。
キップ・ソーン By Keenan Pepper
いやぁ〜、こうして見ると、アメリカはやはり層が厚い!
圧倒されます!
で、本シリーズもここで一旦終了です
ここまでお付き合い頂きまして、誠にありがとう御座いました
深く感謝、です
以上です
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・ 本ブログ題名「なぜ地球磁極は逆転するのか?」と件名「太陽黒点数の推移を追う!」は内容に於いて一致しません。 これは、はてなブログ無料版を使っている上で成行き上そう成ってしまったからです。 これを回避するにはproに行くしかないそうです。 現在、proに移行する計画は無く、当面このままで行くしか無い状況です。 混乱させて大変申し訳ないのですが、よろしくお願い致します。
・ 尚、太陽の黒点に関する一般的な解説は、こちら: [太陽黒点 - Wikipedia]
最後まで読んで頂き、ありがとう御座いました。
免責:
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引用:
[1] 国立天文台 太陽観測科学プロジェクト 三鷹太陽地上観測
[2] List of solar cycles - Wikipedia