5月度その13: ノーベル賞シリーズ続編 ➡ LIGOレーザー干渉計とは!
ノーベル賞シリーズ続編 ➡ LIGOレーザー干渉計とは!
* 昨日、シリーズ最終回で重力波の検出を書いたのですが、LIGOの超高精度測定システム(レーザー干渉計)については、全く説明致しませんでした、ので、本日は続編と致しましてこの点にフォーカスさせて頂きたく
ただ、私は重力波とその望遠鏡そのものは素人で、フォーカスと申しましてもご紹介のレベルであります
* Wiki [LIGO - Wikipedia] は言う:
LIGO施設の本質は、マイケルソン干渉計の原理によって、10-21という極めて微少な相対ひずみを検出できるということにある。この10-21のひずみは、しばしば通俗的に「地球と太陽との距離(1AU、1.5 ×1011 m)に対して、水素原子の直径(1.1 ×10-10 m)程度のひずみ」と表現される。
昨日の記事とは又異なる例題が出て来ました
[マイケルソン干渉計 - Wikipedia] とは、マイケルソン・モーリーの実験(1887年)で有名なマイケルソンが発明した干渉計で:
By User:Stannered - Image:Interferometer.png
マイケルソン干渉計における光の経路
レーザー光はビーム・スプリッター(ハーフ・ミラーとも言う半透明な鏡)を介して北側と東側の鏡AとBに至り、反射して再びスプリッターに戻り、反射してAとBのパスともども仲良く検出器に至り、AとBの位相がズレれば(空間長が変化すれば)干渉パターンが変化する
所で、そろそろコヒーレントなる言葉に慣れよう、位相の揃った光である、熱的な光はコヒーレントではない、白熱電球、原爆・水爆のピカリ、太陽光、超新星爆発のピカリ、はコヒーレントではない、が、レーザー光、シンクロトロン放射光、中性子星の電磁波ビームはコヒーレントであり、コヒーレント光は非常に鮮明な干渉を起こす(干渉だけで言えば、ナトリウムランプのような単色光源はコヒーレントではないが干渉は起こす)、[マイケルソン・モーリーの実験 - Wikipedia] より例を上げれば:
赤色レーザーを用いたマイケルソンの干渉計による干渉縞
パスAとパスBの空間長が変化すると、このパターン(干渉縞)が変化するので、パスAとBの長さ変化が検出できる、この長さ変化はレーザー光の波長の100分の1程度まで可能である、との事(色々な手法を駆使すれば、であるが)⬅ 干渉縞:黒田和男 p18より [http://qopt.iis.u-tokyo.ac.jp/optics/7interferenceU.pdf]
* さて、ここで東京大学 道村唯太(みちむらゆうた)先生の資料である
[http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~grav-wakate3/files/programme/I2_L_Michimura.pdf]
自己紹介の所で:
と書いておられるので、間違いないだろう
資料にはLIGOで観測されたGW150914の波形が載っている:
横軸は時間軸で分解能は1/100秒程度であり、周波数に直せば100Hz程度である
縦軸が歪(Strain)量で 10-21 をセンター・ゼロにして±に振っている、これが空間の歪量だろう、従ってこれが重力波の波形という事になる、人類が始めて目にした重力波の波形なのか !?
上のオレンジ色はワシントン州ハンフォードのLIGOで、中の青いグラフはルイジアナ州リビングストンのLIGOデータで、下は重ね合わせである
[LIGO - Wikipedia] によれば:
天文事象の現在のモデルと一般相対性理論の予測に基づけば、地球から数千光年離れた場所に由来する重力波は4kmのミラー間隔で10−18mほどひずむ事が期待される。これは、およそ10-21の相対的なひずみに相当する。
なるほど、10-21 はここから来ていて、分解能は 10-21 もある、ではなく 10-21 なければ検出できないのだ
ミラー間隔(腕の長さ)は4kmとあるが、天文学辞典 [天文学辞典 » LIGO] によれば、
腕の中で光を反射鏡で何度も反射させることにより、実効約300 kmの基線長をもたせている。
とある、何度も反射というのはファブリペロー共振器を組み込んでいるからで、ファブリペローを導入すると感度は約1500倍くらい上げられる(道村先生資料)、これがAdvanced LIGOであろう、GW150914は、Advanced LIGOの運転開始してたった2日後の2015年9月14日に確認されており、Advenced LIGOにて分解能10-21 が実現できたのだろう
これは、最終的には信号と量子雑音のS/N比の戦いで決まる計算となる、詳細な計算は道村先生資料をご参照下さい
ちなみに、KAGRAは「ざっくり 2 x 10-24 程度」とある
* ここで立ち戻ってマイケルソンの業績をご紹介致したく
何と言ってもマイケルソン・モーリーの実験1887年である [マイケルソン・モーリーの実験 - Wikipedia] より:
19世紀初頭の光学理論においては、光の波動が伝播するための媒質として「エーテル」が存在すると考えられていた。だが、その肝心のエーテルの存在については、多くの理論的・実験的な試みにも関わらず、どのような証拠も見つけることができなかった。
即ち、
地球は太陽の周りを公転しており、その速さは、およそ秒速30kmである。地球はエーテルの中を動いているのだから、地球上の我々から見れば「エーテルの風」が吹いているはずである。
By I, Cronholm144
「エーテルの風」の概念
光はエーテルに乗って伝播するのだから、順風の時に速く、逆風の時に遅く伝わるはずである。従って、異なる方向や時刻について光の速さを調べることで、地球のエーテルに対する相対運動を知ることができると考えられた。
マイケルソンはマイケルソン干渉計を発明し、南北方向と東西方向の光速の違いを測定した、光速に差が出れば干渉縞が変化するからである
実験装置は石造りの建物の地下室に配置され、熱や振動の影響は最小に抑えられた。振動を抑えるための工夫として、装置は大理石の巨大なブロックの上に置かれ、そのブロックは水銀のプールに浮かべられた。
しかし、南北方向と東西方向で光速に差は見い出せなかった
彼らは1887年に、光速は系によって変わらない「光速度不変の法則」を実証したのである、が、本人たちは当時それに気が付かなかったであろう、「光速度不変の法則」の理解は1905年のアインシュタイン・特殊相対性理論を待たねばならなかったのである
しかしながら、これらの緻密な考察と工夫にも関わらず失敗したことで、彼らの実験は有名になり、マイケルソンは、この業績により1907年にノーベル物理学賞を受賞した、これは科学部門における、アメリカ人初の受賞であった、受賞理由は「彼が考案した精密光学機器マイケルソン干渉計とそれによる分光学および計量学の研究」であった
アルバート・マイケルソン By Bunzil
1852 〜 1931
以上です
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・ 本ブログ題名「なぜ地球磁極は逆転するのか?」と件名「太陽黒点数の推移を追う!」は内容に於いて一致しません。 これは、はてなブログ無料版を使っている上で成行き上そう成ってしまったからです。 これを回避するにはproに行くしかないそうです。 現在、proに移行する計画は無く、当面このままで行くしか無い状況です。 混乱させて大変申し訳ないのですが、よろしくお願い致します。
・ 尚、太陽の黒点に関する一般的な解説は、こちら: [太陽黒点 - Wikipedia]
最後まで読んで頂き、ありがとう御座いました。
免責:
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引用:
[1] 国立天文台 太陽観測科学プロジェクト 三鷹太陽地上観測
[2] List of solar cycles - Wikipedia