突然ですがシリーズ ➡ 遠方銀河の見かけの距離と宇宙年齢の関係は?
前回「突然ですがシリーズ」で、遠方銀河を観測する際の「見かけの距離」と「実際の距離」についての記事をアップ致しました
ここで、宇宙の徒然を語り最近は宇宙クイズにまで領域を広げているブロガー「まさき りお(id:ballooon)」さんから:
でも、年齢に関しては見かけの距離が当てはまるんですよね?
なるコメントを頂き「距離と年齢は違います」とお答えしたのですが、気になって調べた所、どうもRioさんが正しい、という結論に至りましたので、ご報告です
お付き合い頂ければ幸いです
事の発端としては:
遠方であればあるほど銀河は高速で遠ざかるとする [ハッブル=ルメートルの法則 - Wikipedia] より:
を天体が我々から遠ざかる速さ(後退速度)、 を我々からその天体までの距離とすると、
となる。ここで比例定数 はハッブル定数 (Hubble constant) と呼ばれ、現在の宇宙の膨張速度を決める。
ハッブル定数は50km/s/Mpc〜100km/s/Mpcまでの間と不正確で定まっていないのである(Mpcとはメガパーセクの意味で、3.26光年の10の6乗の距離)
簡単のため仮に75km/s/Mpcとすれば、ハッブルの法則が言っている事は:
距離130.4億光年先で後退速度は光速を超える(H0=75km/s/Mpcで)
となり、はて?この距離は宇宙の年齢に近いな・・・と
また超遠方銀河の例である [UDFj-39546284 - Wikipedia] では、
UDFj-39546284の地球からの見かけの距離は 133億6,900万光年であるが、実際には宇宙が膨張しているために、実際の距離は316億7,400万光年である。
とあり、この観測例ではハッブル定数として67.15km/s/Mpcを使っているので上の例より見かけの距離は大と出るのであるが、これまた宇宙の年齢に近い!
これは偶然ではなく、宇宙の年齢からハッブル定数H0を決定(逆算)しているのではなかろうか?という疑惑の念にかられたのですが、まさかそんな事はないだろう、と思い記事アップし、Rioさんのコメントにも「距離と年齢は違う」とお答えしたのですが、これが間違っていた、という内容です
何を言いたいのか?
というと、正確さは欠きますが簡単に言えば、再びハッブル図を取り出して、
1.まずその時の最新のデータから宇宙の年齢を出しておき(この例では130.4億年とする)、それを光速30万km/sが到達する距離とし、ここからハッブル定数H0を決定しておく(この例では75km/s/Mpc)
2.次に遠方銀河の後退速度を観測する
これが光速を超える事は絶対にない、あればそれは装置の故障である、この例では29万km/sとした、これは光速の97%の速度で後退する銀河である
3.ここから126.1億光年先の銀河を観測した、となる
実際には観測された赤方偏移Zと観測された宇宙年齢との関係から観測銀河の年齢を割り出す(ハッブル図は使わない!)ので、これよりは少し複雑です、詳しく知りたい方は下の論文をご参照下さい
何故、こんな事になったのか?
は、他にやりようが無い!という事と、で実際の距離はどうやって出しているのか?の辺りは、
「宇宙での距離の決定」<国立天文台理論天文学研究系> 杉山直さん論文(2003年):
https://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/2003/pdf/200312art5.pdf
に詳しいのですが、細かい内容ですので結論を抜粋させて頂きますと:
地平線の大きさを膨張宇宙を表す一般相対性理論の式に基づき、厳密に定義し、決定するこては可能である。それは、宇宙の物質の量や、宇宙項の大きさによって異なったものになる。
それは、
14.3Gpc(1Gpc=1000Mpc)、466億光年になる。
だそうです(UDFj-39546284の実際の距離は316億7,400万光年はこれから算出したものと思われます)
ですが、これといえど、
直接の観測量ではなく、ある定義に基づいたものであるとしかいいようがない。
結局は距離の定義が曖昧で、定義の違いの問題となってしまうから、観測可能な最も遠い距離を宇宙年齢としてしまう
そして、観測した天体の赤方偏移Zの値と宇宙年齢から観測者からどれくらいの時間が経過した観測なのかを算出して、見かけの距離としている
追記:2021/08/15 23:30
現在からどれくらい前なのか?をルックバックタイムと言うそうで、赤方偏移とルックバックタイムの関係が天文学辞典さんからデータとして公開されていましたのでグラフにしました、データはこちらです:
宇宙年齢を137.22億年、ハッブル係数H0を67.7km/s/Mpcとしています
データVersion1:2021.5.14となっています
後退速度が光速になると赤方偏移は無限大になりますので、この時に137.22億年前となるように調整されています
例えば赤方偏移が10の時、ルックバックタイムは132.36億年前となっているテーブルデータです
ハッブル係数H0を67.7km/s/Mpcとしていますから、ハッブル図と矛盾はしませんが、後退速度が光速に近づくとこちらの赤方偏移とルックバックタイムの図を使わないと精度が出ない、という事です
追記終わり
という訳で、Rioさんが正しかったです
今後とも、よろしくお願い致します
以上、お付き合い頂き、誠にありがとう御座いました
感謝です