オタワOTTにおける北方磁場_最小値(ダウンシュート・スパイク)を定量分析します
フレデリックFRDで用いたモデルに、磁力線方向長さx1m高さの長方形を導入した(修正した)モデルを採用しています
要するに、直前のFRD記事は間違っていたという事ですが、まだ疑問が残る状態でして、FRD記事再アップはしばらく控えます
尚、宇宙の徒然を語るブロガー・マサキリオ(id:ballooon)同志がJAEAさんバンアレン帯グラフに私の説明文を入れて下さり、とても見やすくなっています(図5です)
同志はグラフや写真や絵の創作に長じておられ、プロの方なのか?と思っています
お付き合い頂ければ幸いです
1.観測点マップとオタワOTTのBとΔB観測値
図1:世界観測点マップ
中央横の緑ドットラインが、磁気赤道_2021です
図2:2020年1月2日から2022年12月31日の3年(365x3日)変動
Y軸はピッチ100nT、縦幅全体で700nT
ここで、OTTの磁束密度Bは 2022.12.31中央値を取り、
B = 18,140nT
とします
図3:G16(シアン)とOTT(オレンジ)、2023年1月5日〜7日の3日間波形
1月6日(2日目)のLT11.5時台よりダウンシュート値ΔBを、
ΔB = -50nT
とします(比例計算ではマイナスを外します)
従って、ΔB / B = 2.76x10^-3 となります
2.OTT磁力線を横切る全電子数を求める
図4:各観測点の磁気赤道上の磁力線高度マップ
OTT磁力線は、オゾン層・F/F2電離層・バンアレン内帯陽子電子ベルトを通過します
ここで、バンアレン内帯の陽子ベルトは電子ベルトと被っています
上図4のバンアレン帯は概略で、より詳細には:
図5:JAEAさん [電子、陽子(バンアレン帯)のエネルギー別線量分布] より
となります(色付き説明文はブログ側で挿入)
ここで、OTTに着地する磁力線パターンを調べます
図6:
OTT磁力線は、単位面積当り・単位時間当りの粒子数として、図5の高度3,000kmより少し下の2,000kmにおけるEe=0.5MeVの電子線束密度 1x10^11個/cm^2日をm^2secに換算した値を(エイヤ〜!っと)長さ1,000km高さ1mで続くとして、長方形 1000kmx1m を横切る全電子数は秒当り:
1000x10^3 x 1x10^11 x 10^4/24x60x60 = 1.16x10^16 個/sec ・・・(1)
となり、かなりラフに求めた結果ですが、これを使う事とします
図解しますと、
図7:
まず、測地(この場合はOTT)においては、磁束密度BとLT11.5時台の減衰量ΔBを測定しています
一方、この磁力線南北1,000km高さ1mの長方形を西から東へ横切る全電子数は、秒当りの個数で1.16x10^16個であり、この全電子の持つエネルギーが全エネルギーE(単位MeV)となり、全電子の流れが全電流 ie(単位A) となる、というモデルです
この際、東西方向1m幅の電位差(電圧の事です)を V としています
3.動作原理と定量分析
1.バンアレン帯で電子は、地球磁力線の周囲をジャイロ運動(円運動)しています
このジャイロ運動がジャイロ中心に作り出す磁場は、地球磁力線を弱める方向となります
ここに太陽光が差し込むと、電子は太陽光エネルギーを吸収し、等価的に電流値を増やし、地球磁力線をより弱める方向に作用します
陽子も同じ動作をしますが、図5より圧倒的に個数の多い電子のみに絞って定量分析します
2. [ジャイロ運動 | 天文学辞典] より:
荷電粒子が磁場に巻きつきながら移動する運動。強さ
の一様磁場の場合、 この運動は磁場方向に自由に運動し、磁場と垂直な面ではcgsガウス単位系を用いると周波数
(SI単位系では
)の円運動となる。
この周波数をジャイロ周波数といい、円運動の半径
をジャイロ半径という。 ここで
は磁場と直交する速度成分。正の電荷を持つイオンは磁場方向から見て時計回り(右巻き)、電子は反時計回り(左巻き)に運動し、それによってつくられる電流は背景磁場を弱める方向となる。
なのですが、上記の難しい式は一切使わずに、比例配分で分析します
ジャイロ半径 r を流れる電子円電流 ic が中心に作る磁場 H は、H = ic / 2r であり、B = χH であるから、太陽光による磁束密度_変動分 ΔB と太陽光による円電流_変動分 Δi が作る変動分の比例関係式は:
ΔB / B = Δi / i
ΔB / B = 50 / 18140 = 2.76 x 10^-3 = Δi / i ・・・(2)
即ち、太陽光が長さ1000km高さ1mの長方形に作用し電子を励起させた電流値変動比率は磁束密度変動比率と同じであり、 2.76 x 10^-3 である、となります
3.太陽光エネルギーですが [太陽光 - Wikipedia] より
図8:地球軌道上での太陽光(AM0)、および温帯の地上での平均的太陽光スペクトルの概形(AM1.5G)
太陽光として太陽から放出された光は、地球軌道付近で約1.37kW/m2(太陽定数)のエネルギーを持つ。光子の数にして1平方メートル・秒あたり6×1021個以上になる。
光子数は電子数に比べ十分なので、太陽定数エネルギーのどれくらいが1平方メートル・秒あたり吸収され電子が励起されるとすればツジツマが合うか、を調べます
太陽光吸収による変動エネルギーをΔEとし、全電子流による定常エネルギーをEとすれば、円電流にかかる電圧をVとし印加電圧は変動部分も定常部分も同じであるとし(2)式も用いて、
ΔE / E = VΔi / Vi = Δi / i = ΔB / B = 2.76x10^-3 ・・・(3)
まず図5より E を求めると、1eV = 1.602 x 10^-19 J だから(1)式を使い、
E = 1.16x10^16 x 0.5x10^6 x 1.602x10^-19 = 9.3x10^2 J
従って、ΔEを求めると:
ΔE = 2.57 J
一方、太陽定数が1000kmに渡って及ぼすΔEを2.57とするにはどれくらい太陽光が吸収されればよいか係数Nで計算すると、1W = 1J/sec で:
ΔE = 1.37x10^3 x 1000x10^3 x N = 2.57 J
から、N = 1.9 x 10^-9
これは1,000kmに渡る係数なので、1m当りの係数は1.9x10^-15となり、
太陽定数_平方メートル当り1.37kW/secの 1.9x10^-15 がジャイロ運動する電子に吸収されエネルギー変換されれば-50nTダウンシュートの説明が付く、となります
考察:
このモデルには二つの仮定が導入されています
1.仮定その1として、ジャイロ運動するバンアレン帯の電子は太陽光を連続的に吸収し運動エネルギーを高め、昼間に地球磁力線を瞬間的に弱める作用をする
2.仮定その2として、太陽光による変動電流とバンアレン帯の定常電流にかかる1m当りの電圧Vは同じであり、比例式にて消去できる
結果として:
ΔE / E = VΔi / Vi = Δi / i = ΔB / B = 2.76x10^-3 ・・・(3)
が成り立つ、があります
このモデルが正しいかどうかは、フレデリックFRDの吸収率Nが 1.9x10^-15 近辺となるか、比べてみる必要があります
あと値はこんなに小さいのか、も少しあります・・・
ですがまず、(3)式は本当に正しいのか?ΔE / E = ΔB / B は成り立つのか?について、もう少し自信を付けてからFRD記事再アップと致します
しばらく考えてみます
コメントバック
リオ同志(id:ballooon)!
コメントありがとう御座います、感謝です
>む、難しい~ですね(^^;)?
まぁ、簡単ではないです
>図5のご利用、、、何より私が助かります♪
??は??
そ〜でしたか、こちらこそ助かっているのですが、、、
ここはWinWinという事で
>図7が素晴らしいですねー!
褒められたぁ!うッ、うッ、うッ、うれしいっす!
>ヴァンアレン帯は電子西→東、陽子東→西で、地磁気?は南→北なんでしたね?それが弱くなるんですね?
そうです、地磁気ですが、LT11時台に約1/1000程度(0.1%程度)、急速に弱まり急速に回復します(中緯度高部の特徴です)
それに対し、電子流ジャイロ運動はLT11時台に約1/1000程度強まって、これが地磁気を約1/1000程度弱めている、というモデルです
ここで、長さ1000kmに渡って(全体加算で)電子流ジャイロ運動が地磁気を1/1000弱めているので、1m当りにすると10^-6を掛けなければならない
これが、太陽定数エネルギーを1m平方当り1.9x10^-15吸収、という小さな数字にしています
このように小さな値となるのは、1m^3の立方体にもとずいて表現しているからです
実際にはバンアレン帯の深さは100,000kmは充分ありますので(図5)、
1.9x10^-15 x 10^8 = 1.9x10^-7 程度は、深さ100,000kmの1平方m当りで吸収される、LT11時台に、となります
それでもかなり小さな数字です、もう少し考えます
>でも南北に1000㎞、高さ1mってありますが、南北が高さになるんじゃないんですか?
違います、南北に1000km延びている磁力線の事を述べていますからそれが長さで、その高さとは地球半径方向になります
>少しづつ理解していきたい
よろしくお願い致します!
以上でした
コメバック終わり
尚、地磁気データはINTERMAGNETさん [The INTERMAGNET Vision and Mission] 経由で各地磁気データを世界の各観測点さんからダウンロード、
GOESデータはNOAAさん [GOES Magnetometer | NOAA / NWS Space Weather Prediction Center] からダウンロードしています
ここに皆々さま方に深く感謝申し上げます
以上、お付き合い頂き、誠にありがとう御座いました
感謝です