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3月度その3 世界の北方磁場強度シリーズ ➡ 大気潮汐を知る!

世界の北方磁場強度シリーズ ➡  大気潮汐を知る!

 

大気潮汐とは成層圏・中間圏・電離圏における大気循環であり、風を発生させます

大気循環の伝搬の担い手として現れるのが重力波と呼ばれるものであって、[重力波 (流体力学) - Wikipedia] によれば:

流体力学における重力波とは、重力を復元力として再び元の平衡状態に戻ろうとする過程で、媒質の界面で発生して界面に沿って進む波動のこと。

バネと重りの振動子と比較すれば、重力がバネの役割を果たしています

最もよく知られる例が:

図0:流体力学における重力波の例 by Roger McLassus

水中に小物体を落としたときに水面にできる重力波の波紋、です

尚、流体力学重力波は "gravity wave"、一般相対性理論で知られる重力波は "gravitational wave" と呼ばれ区別されますが、日本語では同じ「重力波」なのです

当初、私は流体力学で呼ばれる名称「重力波」にかなり抵抗感があったのですが、今は慣れました

これも重力波と言うのだ、という事です、本文の説明では慣性重力波として出て来ます

 

 

お付き合い頂ければ幸いです

 

 

まず、電離圏バンアレン帯です

図a:電離圏とfoF2とは [電離層(Ionosphere)について解説] さんより

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図b: [バンアレン帯 | 天文学辞典] によれば、

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Y軸は磁気赤道上空と思われます(但しブログ追加のGOES衛星は地軸赤道上空を示す)

南緯30度西経60度を中心とするブラジル磁気異常では、地磁気が弱く内帯の端は高度200km程度まで降下しています

これより太陽に向かって上空ですと約9万kmの所に太陽風と地球磁気圏のぶつかり合うバウショック、約38万kmに月、約150万kmのラグランジュL1ポイントではDSCOVER衛星が太陽風を観測しています

 

 

ここから本文です

1.[大気潮汐 - Wikipedia] より

まずWikiより大気潮汐の概要です

それは太陽放射や月潮汐力による周期的な地球大気の運動で、成層圏・中間圏・電離圏での顕著な気圧変動や風の変化を指しています

成層圏・中間圏・電離圏で観測される気圧変化により吹く風は、1日2回周期で昇圧と降圧を繰り返すことが特徴です(海岸で観測される海陸風は1日1回)

Wikiにgifが載っており、上空100km電離圏E層に相当し夜間でも消滅しない:図a参照、但しD層は太陽光のない夜間には消滅し昼間のみである[電離層 - Wikipedia])にて観測された大気潮汐は:

図1:大気潮汐@100km  by Jensob

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上空100km付近での大気潮汐。赤が高温低圧、青が低温高圧。2005年9月、人工衛星TIMEDの観測による。

これで1日24hの測定です

動きが激しくて見づらいのですが、赤い高温領域に矢印(風)が向かっている、これは高温領域が低圧だからです

反対に青い低温領域から矢印が出ている、これは低温領域が高圧だからです

これは地上に住む我々の常識とは正反対で、我々が高気圧という時は高温高圧であり、低気圧とは雨が降り低温で風が舞い込んでくる(台風のように明確な低気圧中心があれば北半球では反時計回りに風が舞い込んで来る)

 

ここで、宇宙の徒然を語るブロガー「まさき りお(id:ballooon)」さんがブログ記事で [かなとこ雲 - Wikipedia] を紹介しており、それによれば:

図2:かなとこ雲 by Hussein Kefel

かなとこ雲

積乱雲に見られる特徴的な形状で、上昇する積乱雲が成層圏との境界に達すると、ここは対流圏界面と呼ばれる界面があり、積乱雲が成層圏に入り込むことができない場合に横に広がるので形成される

[対流圏界面 - Wikipedia] によれば、この対流圏界面は「堅い」境界ではなく、特に熱帯性積乱雲の場合は対流圏を突破して成層圏の下部にまで達する(従って、かなとこ雲は中緯度特有の雲だろう、と思われます)

また近年の観測で界面は「赤道近傍において南北に高度が増加するU字型の構造をとることが明らかとなっている」との事で、これはfoF2層が磁気赤道を挟んでU字型構造となる現象のアナロジーです

赤道付近の対流圏界面は高度約17kmであり、foF2層は高度約300kmと大きく離れますが、その相似形(アナロジー)に極めて強い興味が湧きます

 

対流圏界面の上では全く別の世界が広がっており、この別世界に吹く風についてご紹介します

 

 

2.そして風が吹く

成層圏・中間圏・電離圏ですが、ここで吹く風(大気潮汐)のメカニズムには3形態があり、その気圧変動は:

A:太陽起因:1日2周期の半日潮汐で、赤道地上付近で平均約1.2hPaの振幅がある。

B:太陽起因:1日1周期の1日潮汐で、約0.5hPaの振幅がある。

C:月起因:月の引力による1日約2周期の太陰潮汐で、振幅は約0.1hPaくらいである。 

ここでCは除外します

振幅とは赤道上で観測される気圧変化で、1日2回の振動が観測できる(A)という事です

半日潮汐と1日潮汐は、太陽の日射により大気が加熱されることに起因し、太陽が天頂に来る地域では大気が膨張して気圧が低下する。降圧のうち、成層圏や中間圏でオゾンが紫外線を吸収することに起因するものが全体の3分の2、対流圏で水蒸気が赤外線を吸収することに起因するものが残りの3分の1を占める。

周期の観点から見ると、

大気による加熱量はなだらかな正弦波ではなく、日の出・日没とともに急増減する形をとることが原因で、気圧の波に高調波が生じ、熱潮汐は1日周期のほかに、半日(12時間)周期、8時間周期、6時間周期などの変動が生まれる。高調波の中では、第2次高調波である12時間周期が最も大きい

出ました、高調波です!

ひとつ前の説明Aと合わせると、赤道における気圧の12h変動成分は24h変動成分より強い、と解釈されます

foF2値とTEC値もグラフ上では急激に変化し、北方磁場強度の変動には1日2回の12h成分が現れる事がありますので、この関連に着目し分析したい、と考えています

ここで、

大気潮汐は主に慣性重力波であり、慣性重力波低緯度では鉛直伝播しやすいが、中高緯度では鉛直伝播しにくいという性質がある。これにより、地上では赤道に近いほど大気潮汐の気圧変動幅は大きく、極に近づくほど小さくなる。 

という事だそうです

尚、慣性重力波は赤道における気圧変動に関係しますが、磁場強度変動には直接作用しないので、これ以上は追いません

 

 

3.その風は複雑を極める

ここで [超高層大気の風と波] によれば、対流圏から電離圏までに吹く風として:

図3は、横軸を緯度、縦軸を高度にとって、1月の平均的な東西風速の強度を等高線表示したものである。高度10km付近の対流圏では、西風のジェット気流が南北両半球に見られる。高度20kmから90km付近までの中層大気中には中層大気ジェットと呼ばれる気流があり、夏に東風(西向き)、冬に西風(東向き)と半年ごとに風向を帰る。オゾン層のある高度30km付近からオーロラの発生する高度80-90kmまでを巻き込んだ大規模な風系が形成されていることがわかる。

図3:緯度と高度と風速等高線

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ALTITUDEは高度、LATITUDEは緯度

CIRA86とは中層・超高層大気のモデルCIRA(COSPAR International Reference Atomsphere)の1986年バージョン、と思われます

実線は西風(東向き)、破線は東風(西向き)、等高線の風速単位はm/s

経度が分かりません、WESTERLYは「西の」意味なので実線が西風、という意味でしょうか

かなり強い風が常時吹いているように見える別世界です、ですが、、、

 

高度80kmD層や高度100kmE層では大気密度は極めて低くなっており、地上での風速20m/40m/60mと同じ感覚ではないだろう、と思えます

同様に図aでは高度300kmF2層で温度約1,200°になっていますが、これも地上での1,200°ではないだろう、と思えます(同じであったらISSは溶けています、船外活動なんて出来る訳がありません!)

温度というのは最も分かりにくい物理量なのですが、それに風速が加わった、という事です

 

図3の風マップは大気潮汐以外の風も含んでいますが(例えば西風のジェット気流、1日2周期の風ではない)風全体を把握するには良いマップだと思います

しかし極めて複雑で、電離圏において電離したプラズマ粒子が磁場や電場内を風によって運ばれて、、、という解析はドツボにハマるのでやりません

ここで着目すべきは3日間波形FFT解析でしょう、特に24h成分と12h成分の比率を月毎に追ってゆくことが考えられます

 

 

 

まとめ

1.少なくとも電離圏下部では風が常時吹いており、それは高度100km付近のE層であれば図1に示される(80kmD層であれば図3に示されている) これが北方磁場強度の変動に影響を与える可能性はもちろんあります

赤道上での気圧観測では、12h変動成分が最も強い(1日2周期が大気潮汐の特徴である)

2.ここで電離圏における大気潮汐が北方磁場強度にどのような影響を与えるか?を風から分析する事は不可能(私には)

加えて、高度300kmのF2層で風が吹いているのかどうかも分からない(私には)

従って、3日間波形のFFT解析を行い、24h vs 12h強度比の解析をする方が良さそうです(風が関係しようがしまいが、結果は出て来る、既に出て来ている!)

3.2月の3日間解析では軽い磁気嵐の日を1日含んでいました、これですと72h成分が非常に強く出ます(3日に1回の振動だから)

もう少し辛抱強く待って平穏な3日間波形を選択する必要があります

300kmFoF2層付近で風が吹いていないとしても、電離そのものが太陽起因で発生するから1日24h周期が基本波ですが、foF2値やTEC値は急激変化なので大気潮汐と同様に高調波を発生させています

1年程度の測定が必要となるでしょう電離圏の風に依存するなら季節依存性が出るだろうし、依存しなければ大気潮汐ではなく単に太陽照射が原因で大気潮汐と同様に高調波発生、となるでしょう

しかし磁力線パス上の変動を追っているので季節依存性は出ないのでは?という疑問も生じますが、、、 まぁ、やってみます!

4.尚、対流圏で発生する積乱雲による風は大気潮汐なのか?がよく分からなくて、この説明では対流圏は大気潮汐から除外しました(少なくとも電離圏ではないので、磁場変動に関与しないだろうから)

 

最後に世界まとめマップで使う観測点緯度と磁気赤道上の磁力線高度マップを添付致します

図4:

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図bより、高度2,000kmにバンアレン内帯陽子ベルト、高度3,000kmに電子ベルト、があるとしています

バンアレン帯の高度は磁気赤道上空の高度で、中緯度や高緯度上空で変化すると思われますが、ここでは図bに従った数字(コンスタント)を入れています

 

 

 

以上、お付き合い頂き、誠にありがとう御座いました

感謝です!