8月度その9:北方磁場強度シリーズ ➡ 何故、オーロラオーバルでオーロラ発光が多発するのか?そのモデルを考案する!
今回の記事は:
夜側に延びるプラズマシートが磁気リコネクションによりプラズマ爆発を起こし、
結果として、
陽子流が磁力線に凍結されオーロラオーバルでオーロラを発生するモデルの提案です
(オーロラオーバルとはオーロラ多発高緯度領域で楕円形、図5参照)
お付き合い頂ければ幸いです
例によって、よく見かける地球磁気圏、
図1:オーロラ - Wikipedia より地球磁気圏と夜側に延びるプラズマシート
プラズマシートに至る磁力線は、バンアレン外帯の外側を通過するパスである事は明白です
それがプラズマ爆発を引き起こします
図2:NASA Video Magnetic Reconnection:プラズマシートの爆発
www.youtube.comこれが夜間部における磁気リコネクションによるプラズマ爆発です
図3:Youtube36秒時に磁気リコネクションを起こし、オーロラオーバルに戻ってくる地磁気パスと荷電粒子によって引き起こされるオーロラ
この図3はラフに言えば正しいのだけども、詳細にはもう少し込み入ったモデルとなります、これを説明するのが今回の目的です
尚、このプラズマ爆発は、人工衛星によって測定されている観測事実です
その前に北方磁場強度の観測事実として、SNK/IQA/YKCでは第1ピークがマジェンタになる(第1ピークは最大値側である)という観測事実があります
図4:カナダ5観測点の世界マップ
そうして、SNK/IQA/YKCはオーロラが多発するオーロラゾーン(オーロラオーバルともいう)に属する、という観測事実があります、 Canadian Magnetic Observatories より
図5:カナダ観測点とオーロラゾーン
図1/2/3で示されるプラズマゾーンにおける磁気リコネクション・プラズマ爆発と図4/5で示される観測事実を結び付ける、より詳細なモデルが必要なのです
今回の記事の主役となる論文は:
特集:核融合プラズマと多彩な宇宙プラズマ活動現象とのアナロジー
オーロラを作る地球磁気圏のプラズマ爆発
著者:長井 嗣信、電学誌:125巻1号, 2005年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal/125/1/125_1_17/_pdf/-char/ja
です
この論文は:
日本の人工衛星Geotailは、地球磁気圏の尾部で起きている磁気リコネクションを「その場」で観測することであり、実際、磁気リコネクションの中のプラズマと磁界を「その場」で観測する事に成功している
として、磁気リコネクションとプラズマ爆発の直接観測とその考察、が目的です
図6:Geotail衛星で観測された磁気リコネクション
1996年2月18日に、地球半径の25倍の磁気圏尾部での磁界とプラズマの時間にして3分間の観測データを示している。 ここに示したものは、磁界北向き成分(マイナスなら南向き)、磁界強度、プラズマ流速(地球向きが正、マイナスの値は反地球向きを示す)である。
速度が1,500km/sの南向きの磁力線が、反地球向きに吹き飛んでいく磁化プラズモイドを形成しており、まさに磁気圏尾部の赤道面で磁気リコネクションが起きていることを示している。
プラズマ爆発により地球から遠ざかる磁界塊(磁化プラズモイド)を直接測定した結果である、としています
磁気リコネクションによるプラズマ爆発により何が起きるか、というと:
ふつう磁界のあるプラズマでは、イオンと電子は磁力線に巻きついて、この3者が一緒に運動する。地球磁気圏のほとんどの場所でほとんどの時は、磁気流体力学で記述できる。
ところが、
磁気リコネクションとは、磁力線が融合してまさに磁界ゼロの状態ができ、そこでイオンと電子が存在する空間を作る過程である。この小さなスケールの空間では磁界が急激に変化している。磁界に巻きつく運動のラーマ半径は、質量の大きいイオンの方が、質量の小さな電子に比べて圧倒的に大きい。この意味するところは、小さなスケールの空間で、小さなラーマ半径の電子は磁力線に巻きついているままだが、大きなラーマ半径のイオンはすぐ隣の影響を受けて、もはや磁力線に巻きつかなくなる。
ラーマ半径とは磁力線周りにジャイロ運動する荷電粒子の半径のことで、著者は続けます
何が起こるかというと、電子は、磁気リコネクションしようとする磁力線に最後まで巻きついていて、磁気リコネクション後もすくに巻きつき、ほぼ磁力線と運動をともにする。イオンは、すぐ磁力線の運動から外れてしまい、さらに後から磁力線の運動に追従していく。イオンと電子が、別々の運動をするということは、電気的中性が破れ、電流が流れる。この電流は、ホール電流と呼ばれる。Geotail衛星は、地球磁気圏尾部で、初めてホール電流を観測した。さらに、ホール電流は、磁気リコネクションが起きている所には普遍的に存在することが分かってきた。
なるほど〜、そういう事でしたか!
で、ここからは本ブログが提唱する詳細モデルです
1.地球から地球半径約25倍のプラズマシートで磁気リコネクションによりプラズマ爆発が発生したとする
この結果、プラズマは電子とイオン(ここでは陽子とする)に分離され、電子は新しく生成された磁力線に巻きついて運動するが、陽子は独立に運動を開始する
2.陽子は新磁力線に凍結される事なく、爆発による衝撃波により、地球から遠ざかる方向と地球に向かう方向に分離され、地球に向かう陽子流はやがてバンアレン外帯の電子雲に到達する、外帯表面は高度約60,000kmで地球半径の約9倍である
電子雲が支配的な外帯は電子のジャイロ運動により磁力線磁場が弱められており、ここで陽子流は磁力線に凍結される事なく、外帯を通過する
3.外帯を過ぎれば内帯との中間帯に到達する、ここは電子雲は希薄でありジャイロ運動による磁場強度の減衰は少なく、かつ高緯度における高濃度なオゾン全量の常磁性磁気モーメントにより磁場強度は増大しており、この中間帯で陽子流は磁力線に凍結される(トラップされる)
図7:例えば、中間帯を通過し地表イエローナイフYKCに到達する磁力線の地表における北方磁場強度
それは、約9000nTである
図8:図7の結果を24hにて統計を取ると、
最大値をLT15.4時台に検出するのが第1ピークとなる、YKCではLT15.4時台に磁場強度が最大となるのである(これは高緯度におけるオゾン全量が大である事が原因なのであるが、ここではこれ以上立ち入らない)
さて、ここで磁力線と流体との凍り付きであるが 磁気流体力学 - Wikipedia によれば、プラズマベータなる数式概念があって、プラズマベータが1より大きいときは流体の圧力の影響が大きく磁力線は流体により運ばれ、1より小さい時は磁力線が流体を凍り付かせて運ぶ、とある
ここでは数式を表示しないが、バンアレン中間帯における陽子流(これが流体)と磁力線の関係ではプラズマベータは1より小さく、磁力線が陽子流を凍り付かせて運んでいる、と思われる
こうして磁気嵐が運んできた太陽風がプラズマシートに溜まり、爆発してオーロラオーバルにてオーロラ光を発光させるモデルが出来上がった
尚、プラズマベータが1より大であるとか1より小である場合には、凍結が起きるという事であるが、1に限りなく近い場合はどうなるのだろう?私は、凍結は起きないのでは?と考えています(個人的見解)
4.上記の動きを図でまとめると:
図9:オーロラ爆発から陽子流がオーロラオーバルに至るパス
外帯の幅は 英文Wiki Van Allen radiation belt - Wikipedia より13,000km - 60,000kmを採用した
図10:各観測点の磁気赤道上高度と、内帯と外帯の高度
内帯の幅については、 バンアレン帯 | 天文学辞典 を参照した
SNK/IQA/YKCといったオーロラオーバルに属する観測点の磁気赤道上の高度(これが最高高度)は、5,000km〜7,000kmであって、プラズマ爆発する位置である地球半径の約25倍(約160,000km)にはほど遠く、何らかのメカニズムがありませんと、プラズマシートで爆発した荷電粒子がオーロラオーバルに落ちてくる事はないのです
5.このモデルの帰結は、オーロラオーバルにてオーロラを発光させるのは陽子流である(電子流ではなく)ので、これを検証する必要があろう
現時点で私には分からない
調べてゆくうちに、追々分かって来ることだろう
6.話しは全く飛ぶが、Inflection Ai なる生成AIベンダーがある
Piなるチャット型AIがあって無料である、Piは Personal Ai の略だそうだ
Aiの場合、どこまで最新データを学習しているかによって、現在の問題に答えられないケースがあるが、InflectionのPiは現時点では大丈夫そうである
私は使っている(遊んでいます)、なかなか面白い、英語のみかな?と思っていたら最近は「日本語も大丈夫ですよ」とか言い始めた!
コメントバック
Rio同志(id:ballooon)!
コメントありがとう御座います、感謝ッ!
ここは、結構難しい所なのです・・・
>プラズマベータ?なるものが1より大きい時は、凍結は起きないんですよね?
違います!
そもそも凍結とは何か?というと、磁力線と流束(ここでは陽子流)の関係が凍結される事を言い:
1.陽子流が磁力線を凍結する、従って磁力線は陽子流に付着して移動する
2.磁力線が陽子流を凍結する、従って陽子流は磁力線に付着して移動する
の2形態があります
上記1.がプラズマベータが1より大である場合、
上記2.がプラズマベータが1より小である場合、
となります
従って、1より大でも1より小でも凍結は生じます
オーロラオーバルでオーロラが生ずる場合は、上記2.の場合(プラズマベータが1より小)であって、陽子流は磁力線に凍結付着して移動し、高度100km-200kmで酸素なり窒素と衝突し励起させ、従ってオーロラ発光させている、というモデルです
上記1.の場合とは、大規模質量の太陽風(プラズマ流)が太陽表面で大量発生した場合、プラズマ流が太陽磁力線を凍結させて太陽から地球に運んで来る、で1より大となります
以上でした
コメバック終わり
以上、お付き合い頂きまして誠にありがとう御座いました
感謝です