12月度その38:磁気圏における荷電粒子の勉強シリーズ ➡ 今回は、バンアレン帯における電子運動の勉強、です!
バンアレン帯における荷電粒子というと、
観測系では陽子プロトン
がよく見つかるのですが、
勉強系では電子のみ
が見つかるのです!不思議です、が、ここは電子の動きを勉強します
お付き合い頂ければ幸いです m(_ _)m
題材は、NICTさんより:
「放射線帯粒子シミュレーション」
https://www.nict.go.jp/publication/shuppan/kihou-journal/houkoku67-1_HTML/2021S-03-02.pdf
で、題名からして2021年の発表で、著者は:
齊藤慎司 (さいとう しんじ)さん
電磁波研究所、電磁波伝搬研究センター、宇宙環境研究室
研究員、博士(工学)、超高層大気物理
です
この論文ではバンアレン外帯を電子放射線帯と称しており、ここの電子の動きを述べるものです
構造として:
磁気圏内部には高エネルギー電子が捕捉されている電子放射線帯と呼ばれる領域がある(図 1)。地球を中心に二重のドーナツ状の構造をしており、内側の構造を「内帯」、外側の構造を「外帯」と呼ぶ。内帯は地表面から 1 − 2 RE(RE:地球半径)の範囲内に分布しており、約 800 keV 程度のエネルギー(光速の 90 %以上の速度)を持つ電子が多く存在している。
この論文は外帯を述べるものですが、内帯にて既に約800keV程度のエネルギーを有する電子が多く存在し、それは光速の90%以上の速度、である、との事です
驚きました!
図1:電子放射線帯構造の概略図
電子放射線帯構造の概略図 内側の内帯と外側の外帯に分かれている。内帯は比較的安定している
一方で、外帯は磁気嵐が起こると大きく変動する。
静止軌道〜6.6Reとは、GOES衛星の高さ35,786kmです
一方で、外帯は約 3 RE から静止軌道(6.6 RE)以上にまで広がっており、数 keV から数 MeV の電子で構成されている。内帯に分布する電子のフラックス量は比較的安定しているが、外帯電子のフラックスは通常時に比べて 100 倍から1,000 倍に増加することが頻繁に起きる。
ここで、
図 2は日本の科学衛星「あらせ」によって観測された電子放射線帯外帯の時系列変化を表している(DOI: 10.34515/DATA.ERG-00001)。
図2:高エネルギー電子のフラックス分布
2018 年に日本の科学衛星「あらせ」によって観測された高エネルギー電子のフラックス分布(E=1.5-2.2 MeV)L 値が 3 から 7 付近にまで広がっていて領域を外帯と言う。L 値が 3 以下で比較的フラックスが小さい領域はスロットと呼ばれており、これより下の L 値の領域が内帯となる。
図中では主に外帯が示されており、太陽風の影響を受けて大きく増減を繰り返す。
図3:放射線帯電子の特徴的な三つの運動として:
放射線帯電子の運動は 3 つの特徴的な周期運動に分類される。図 5 に示されるように、これらはラーモア運動、バウンス運動、ドリフト運動と呼ばれ、それぞれ周期と時間スケールが異なり、特徴的な運動をする。
これらの運動は 3 つの断熱不変量に関係している。
ここで、
断熱不変量は、定義される時間スケールより短い時間でのじょう乱を受けることで壊れる(変化する)。これは電子が受ける「散乱」を意味する。散乱によって高エネルギー電子の数が増えることを放射線帯電子の「加速」もしくは「増加」といい、放射線帯電子の数が減ることを「消失」という。
あ、これは知りませんでした!
高エネルギー電子の散乱要因(動径方向とは、自転する方向である)
放射線帯電子の散乱要因の一つに動径方向拡散がある。これは全球的な電磁場変動である地磁気脈動によって引き起こされる。数百秒程度のゆっくりとした変動周期を持っているため、第 1 及び第 2 断熱不変量は保存される。一方で第 3 断熱不変量は壊れ、動径方向への散乱が起き、L 値が変化する。
L値が変化する?
動径方向拡散により内側へ移動する電子は加速、外側へ移動する電子は減速される。
これは背景磁場強度が増加/減少する(内側/外側への移動)と、第 1 断熱不変量保存の下で運動量が増加/減少するためである(ベータトロン加速)。
ここでベータトロン加速とは:
磁場を変化させて生じる誘導起電力によって電子を加速する加速器がベータトロンであるが、同じ原理で、天体において変化する磁場により電子が加速される機構をベータトロン加速と呼ぶ。
であって、
図 2に見られるように、L 値が 4 〜 5 付近で放射線帯電子フラックスのピークが現れるのは電子が外側から輸送されることによるベータトロン加速が原因の1 つを担っていると考えられる。
また、
周期数百秒程度の地磁気脈動による散乱に加え、局所的に発生する数 kHz 程度の電磁波によっても電子は散乱される。磁気圏が荒れた際に起こる非線形的な物理過程を介して、ホイッスラー波と呼ばれる数 kHz程度の周波数を持つ電磁波が発生することが知られている。
この電磁波は磁力線上をバウンス運動している電子に作用し、共鳴条件を満たすと、ホイッスラー波と電子の間で効率的なエネルギーのやりとりが行われる。
こうして、第1から第3までの断熱不変量が壊れ、加速や減速が生ずる
また、位相捕捉と呼ばれる非線形散乱が起こると、数秒の間に光速近くにまで達する電子を生成することがこれまでの研究で分かってきた。
なるほど〜、そうでしたか!
論文の本質(シミュレーション)にまで至っておりませんが、この辺りで閉じます
で、図3の3運動は陽子にも適用されるのでしょうか?
ラーモラとドリフトは当然陽子にも適用されるでしょう
問題は、バウンス運動・ミラー反射、かな?
調べてみましょう!
コメントバック
リオ同志(id:ballooon)!
コメントありがとう御座います、感謝です
ここでは、電子放射線帯 ➡ バンアレン外帯 の事を言ってます
>図2が面白いですね?これ、高エネルギー電子が増減を繰り返してるんですか?
そういう事になります
X軸は日付です
ゼロスタートで364日までいく、訳ですね!
以上です
コメバック終わり
以上、お付き合い頂き誠にありがとう御座いました
感謝です