世界の北方磁場強度シリーズ➡地磁気磁力線と相互作用する上昇気流を考察する!
空中における地磁気磁力線は複雑で、この北方磁場強度シリーズを初める時に「どうなっているのだろう?」と思ったのですが、今でも「どうなっているのか分からない!」のです
しかし、地表の磁場強度はモデル化され観測計算されており、そこからの推論で進める訳ですが、ここに来て、上昇気流が電離圏でも影響を与え磁力線と相互作用しているのでは?と思われる観測事実がありますので、本日はこの辺りを考察してみたいと思います
何が複雑かと言って、、、
地磁気磁力線のシミュレーション結果がこれ ⬇
なの(By [Earth's magnetic field - Wikipedia] )ですから!
お付き合い頂ければ幸いです
まず、地磁気一般と電離圏一般です
地表の磁場強度マップ2020年は:
図a:ESAより地球全体を示せば、
図b:電離圏とfoF2とは [電離層(Ionosphere)について解説] さんより:
図c:電離圏S4シンチレーションマップはオーストラリア政府 [SWS - Section Information - About Ionospheric Scintillation] より
図d: [バンアレン帯 | 天文学辞典] によれば、
南緯30度西経60度を中心とするブラジル磁気異常では、地磁気が弱く内帯の端は高度200km程度まで降下しています
これより太陽に向かって上空ですと約9万kmの所に太陽風と地球磁気圏のぶつかり合うバウショック、約38万kmに月、約150万kmのラグランジュL1ポイントではDSCOVER衛星が太陽風を観測しています
ここから本文です
1.世界地磁気強度マップですが:
NOAAさん [World Magnetic Model | NCEI] より、2020年モデルとして、
図1:Total Intensity F 全磁力強度
Main Field Total Intensity(F)とあるのは、
図2:
のFの事で、地磁気ベクトルの総和(だからTotal)を示しています
Fはベクトルですから方向があるのですが図1から方向は消去されています、従って強度数値のみを図1は示しており、磁場ポテンシャル等高線の図と言えます、その意味で冒頭の図aと同じです
ここで図aより、図1ではブラジルで磁場ポテンシャルの最も低い深い井戸がある事が分かります、この井戸は東西に延びてインド洋にて鞍部を形成している事も分かります
図1では高低が分からないのですが、図aと比較して、高い山はカナダ北部・バイカル湖北部・オーストラリア南方の南極大陸の南磁極にあり(北磁極はカナダ北部とバイカル湖北部とで丘を形成する程度の強度です)、低い谷はブラジル・南大西洋にある事が分かります
2.地磁気赤道
さて、ここで地磁気赤道なる概念があり、それは何しろ北側にS極、南側にN極があるのだから、中央にS-N赤道ラインがあるだろう、という事で、Wiki [Earth's magnetic field - Wikipedia] より、2015年モデルですが、
図3:Inclination I
Inclination I は図2のIですが、ゼロ度の緑ラインが地磁気赤道に相当します
この図はNOAAさんの図ですが、現在NOAAさんサイトから公開されていません、何らかの理由で閉じたものと思われます
図1の東西に延びるポテンシャルの井戸(谷)の連結が地磁気赤道ラインに対応している事が分かります
ここはポテンシャルの井戸ですので平均値としての地磁気強度は弱い事に注意です、地磁気赤道ラインは平均値として地磁気の弱い概略ラインを示しているのです
3.上昇気流!
と言えば、まずは地表対流圏の大気循環であり、 [Atmospheric circulation - Wikipedia] より赤道上で上昇気流が発生し、南北に分かれて循環するもので、
図4:大気循環の立体的な図解
方向が斜めになるのは、地球の自転によるコリオリの力によります
赤道上での上昇気流の循環と言えば、
それは、雨
を直ちにもたらします、降水 [Precipitation - Wikipedia] より
図5:By Chh2021
降水量の平均値変化です、青が降水量大です、どれ位の区間でどれ位の期間を取ったのか、詳細が分かりませんでした
が、赤道上で降水量大である事が分かるのと、まるで心臓の鼓動のようです!
赤道における降水帯が南北上下に揺れるのは、夏冬に対応してでしょう
対流圏の上部である成層圏では、ブリューワ・ドブソン循環 [Brewer–Dobson circulation - Wikipedia] があり、赤道から両極地へ向けてオゾンを運んでいます
図6:ブリューワ・ドブソン循環
年平均のブリューワー・ドブソン循環。左目盛りは、下目盛りは緯度(-は南緯)、色はオゾン濃度
3.それでは電離圏では?
そこでfoF2値マップを調べますと、冒頭の、
図c:電離圏S4シンチレーションマップはオーストラリア政府 [SWS - Section Information - About Ionospheric Scintillation]
は電離圏においても地磁気赤道を対称に南北で電離が盛んに行われている事を示しています、この図cは観測時期などが今ひとつ不明確なのですが、
やはりオーストラリア政府Space Weather Services [SWS - Global HF - Ionospheric Map] さんからリアルタイムのfoF2値マップを取ると、
図7:2021/12/21 21:30 UT時の世界foF2値マップ
磁気赤道帯に沿ってfoF2値帯が発生している事が分かります、この図で南にfoF2値が大である領域が下がっているのは冬だからでしょう
図7はリアルタイムである瞬間を取った時のfoF2値図(地上からパルス応答の観測)で、図cは年を通じてシンチレーション総和の図(GPS衛星からの信号を地上で観測)、です
電離圏における電離モデルはIRI [International Reference Ionosphere - Wikipedia] なるモデルがあるそうで、それによれば電離圏における全電子密度TECは、
図8:電離圏におけるTECイメージ:IRI2007による
この図、見にくいのですが、世界マップで右上ブルーの下に北米大陸、左下の空色の下にオーストラリア大陸があります
観測&計算期間をどれ位とったのか分かりません、が、南米ペルー沖の地磁気赤道帯を対称に南北に分離されたTEC帯が生成され、かつ、それは南側の方が少し強い、を示しています
そして気象庁さん [気象庁 | 海面水温実況図] より、
図9:2021/12/21の海面水温マップ
です、図7と時間を合わせていますが、恐らくこの図はJSTです
南米ペルー沖に冷たい深層海流が湧き出て西に向かっている事が分かります(ラニーニャです)
私には、
1.南米ペルー沖の冷水海流により上昇気流は南北に2分割され、低高度の対流圏の降水では顕著に現れないが、成層圏を通じ電離圏に至る上昇気流では南北分割が顕著に現れる事
2.電離圏での電離状態では磁場ポテンシャルの井戸に沿って電子が集結する事、そしてイオンも同様に集結しているだろう、という事
3.南米沖に強いfoF2値やTEC値が現れる(それは南米大陸上には現れない)ので、上昇する電離分子にはH2Oが含まれる事(但し、H2Oは電離してHOマイナスとHプラスイオンになるので、foF2やTECでは直接観測されないが)
と思われてなりません
まとめ:
1.以上、推測をまとめました
2.図7のfoF2値リアルタイムマップは推測ではないので、今後、3日間波形FFT解析と同期を取って提示する事が考えられます、例えば、3日間の中心日のホノルルHONのLT13.5時台におけるfoF2値マップ、とかです
以上、お付き合い頂き、誠にありがとう御座いました
感謝です!