なぜ地球磁極は逆転するのか?

太陽黒点数/オゾン全数/エルニーニョ/太陽活動と米国日本の地磁気変動を追います!

7月度その2:北方磁場強度シリーズ ➡ 低緯度グアムGUAとサンファンSJGの北方磁場強度がLT昼間に最大を示す原因は? ➡ 酸素やオゾンの磁気モーメント !!!

今回は、低緯度グアムGUAとサンファンSJGの北方磁場強度3日間変化がLT昼間に最大値を観測する原因を探ります

従来、太陽光による磁力線空間の圧縮、といった説明を繰り返してきたのですが、これは完全なる過ちでした!

 

以下、ご説明申し上げたくお付き合い頂けますよう、よろしくお願い致します

 

 

1.各種高度マップ

まず各種の高度マップを提示します

図1:各観測点_磁力線高度マップ

      グアムGUA 24km(磁気赤道上)   22km(地軸赤道上)

サンファンSJG 615km(磁気赤道上) 572km(地軸赤道上)

 

図2:ユーザーガイド | 電離圏 | 宇宙天気予報 さんより電離圏高度マップ(700kmまで)

 

図3:gas science さんより120kmまでの大気圏高度マップ

カーマンラインとは単に高度100kmの事を示す

 

この領域は同一域にダブった名称が付けられているので初めての人は混乱する

図4: 電離層 - Wikipedia より、電離圏は熱圏・中間圏と被る名称

 

 

2.電離圏で磁場は凍結するか?

プラズマとは何か?どのような状態か?どこに存在するのか?をもう一度まとめてみると、プラズマ物理 - Wikipedia (これはとても良くまとめられたWikiより

プラズマの要件とは:

プラズマはイオンと電子との混合物で電気的に中性な物質である。それが真にプラズマらしく振る舞うには次の3つの要件を満たさなければならない。

  1. その物質系の大きさ L がデバイの長さ λD より充分大きくなければならない。すなわち L ≫ λD
  2. 考えている現象の時間スケール t がプラズマ振動の周期よりも長くなければならない。すなわち t ≧ 1/ωpe
  3. 半径が λD の球の中の粒子数 Λ が充分大きくなければならない。すなわち Λ ≫ 1。Λ をプラズマ・パラメタという。

これらの要件の意味は次の通りである、と続き、

要件1のデバイ長は デバイ長 | 天文学辞典 の方が分かりやすく、

多数の荷電粒子がクーロン力のもとで運動しているプラズマにおいて、個々の荷電粒子のつくる電場の影響が及ぶ特徴的な距離。電子が温度 T、密度 nであるプラズマに対してMKSA単位系で

λdebye = (ε0 kB  T/n e^2)^1/2

で表される。ここで  ε0 は真空の誘電率 kB はボルツマン定数 T は温度、 n は電子密度、e は電気素量(素電荷)である。

荷電粒子の周りには反対符号の電荷をもった粒子が集まる傾向があるため、ある距離だけ離れると電場の影響が遮蔽される。この距離がデバイ長である。デバイ長よりも大きな空間スケールでは荷電粒子の運動は電場の影響をほとんど受けないとみなすことができる。

要件2のプラズマ振動数とは、

(電子)プラズマ振動数 ωpe はプラズマ振動の固有振動数で、その逆数 1/ωpe は電気的中性が破れたとき、電子がそれに反応して中性を取り戻すのに必要な時間を表す。そこでこれより短い時間内では電気的中性が保証されず、プラズマらしく振る舞わない。従って、イオンと電子との混合物がプラズマとして振る舞うためには、考えている現象の時間スケール t が要件2を満たして充分に大きいことが必要である。

要件3のプラズマ・パラメタとは、

要件3は次のように考える。すなわち半径 λD の球の中の粒子数であるプラズマ・パラメタ Λ の値が1の程度だと、実際には他の荷電粒子は時々やってきてクーロン力を及ぼして去るだけであり、沢山の粒子の協同作用であるデバイ遮蔽などが実質的意味を持たない。逆に Λ の値が充分に大きければ、荷電粒子は常に沢山の粒子と作用を及ぼしあっていて、全体としてプラズマらしくまとまって行動する。これが上の条件の意味である。

そして、ここからが重要で、代表的なプラズマ例とその特性が示されます

 

図5:宇宙および地上のプラズマの代表的な例とその特性値

所在場所 n (m−3) Te (eV) Ti (eV) λD (m) ωpe (s−1) Λ α
HII領域 104–1010 ~1 ~1 102–10−1 104–107 107–1010 ~1
太陽コロナ 1014 102 102 7×10−3 5×107 108 1
地球軌道付近 2–5×106 10 10 10 105 1010 1
電離層(F2層) 1012 ~0.1 ~0.1 2×10−3 6×107 104 10−3
広告用ネオンサイン 5×1018 2.5 0.15 5×10−6 2×1010 103 10−4
小型定常放電装置 1016–1020 1–5 0.1–5 5×10-3–10−6 2×109–1011 102–105 10−10–10−4
核融合炉(DT反応) 1020 104 104 10−4 6×1011 108 1

ここで n は電子密度 (m−3)、Te は電子温度 (eV)、Ti はイオン温度 (ev)、λD はデバイの長さ (m)、ωpe はプラズマ振動数 (s−1)、Λ はプラズマ・パラメタ、α は電離度を表す。

ここで生ずる疑問は、果して電離圏F2層は磁場の凍結を想定してもよい(電気伝導度無限大で理想MHDが適用できる)環境なのだろうか?という事である

ここで図5の電離圏F2層と地球軌道付近を見比べてみよう

地球軌道付近とは少なくとも地上昼間約6万km程度上空の地球磁気圏境界でGOES衛星の約3万5千kmより宇宙空間に近く、GOES衛星高度にて磁場の凍結が起きているので地球軌道付近でも磁場の凍結は当然起きていると見てよい、そこで、

・ まずF2層プラズマ・パラメタ Λ は地球軌道付近に比べ100万倍小さい事

・ そして電離度 α は1000倍小さい事

この2点からF2層(のみならず電離圏)で磁場はほとんど凍結しない(するとして高度800km付近の電離圏または熱圏最上層)と仮定して考察を進めます

 

3.電離圏で電子ジャイロ運動は機能しているか?

ここは難しい、分かりやすい解説が見当たらない!

そこで、上記の図5より磁場の凍結と同様にF2層について、プラズマパラメタが地球軌道付近より100万倍小さい、電離度は1000倍小さい、という磁場の凍結と同じ理由からF2層のみならず電離圏において電子ジャイロ運動は有効に働いていない、と仮定します

恐らく機能するのは電離圏最上部(熱圏最上部)約800km以上で、主として電子/水素/ヘリウムから構成され重力による分離が行われる領域から上であろう、と考えています

と申しますのも、東京大学プラズマ物理学講義レジュメ・江尻品さん(2003年度夏学期)

http://fusion.k.u-tokyo.ac.jp/~ejiri/ejiri/lectures/psec-all.pdf によれば、

磁場に垂直な面内では,粒子は Larmor 半径程度に広
がりが抑えられる。Larmor 半径がシステムの変化のス
ケールに比べて十分小さいとき,粒子は磁力線に沿って
動くと見なしてよい(案内中心近似)。従って,案内中心
Guidinig Center)がどのように動くか(ドリフトする
か)が重要になってくる。

とあり(Larmor半径とはジャイロ運動半径)粒子衝突が頻繁である系でジャイロ運動(案内中心近似と言うのですか)は成立しないのでは?との印象を受け、成立するのは電離圏最上部(熱圏最上部)約800km以上から、と思えるのです

ここに書かれているようにドリフト運動も同じですか、確かにジャイロ運動しなければドリフトも無いでしょうから

尚、酸素イオン等のイオンによるジャイロ運動ですが、重すぎると思われここでは想定しません

 

4.イオンを含む分子の磁気モーメント(常磁性反磁性

さて、ここでもう一つの要素、分子の磁気モーメントです

分子は磁気モーメント(棒磁石の事)を持ち、常磁性が背景磁場と同方向、反磁性が背景磁場と反対方向の磁気モーメントを有します

即ち、常磁性分子であれば磁場の方向に分子が揃い背景磁場を増大させ、反磁性分子であれば反対に背景磁場を減衰させます

酸素は常磁性、窒素は反磁性です

ここで日本ガイシさんのサイトより、

図6:酸素が磁石にひかれる実験動画

www.youtube.com

窒素が反磁性で酸素が常磁性、空気は対流圏における容積比率で 窒素78.1% vs 酸素21.0% であり、対流圏における空気は反磁性常磁性か?というと、金沢工業大学さん 透磁率 より、

図7:

空気は僅かに常磁性体でした(ちなみに水は反磁性体)

 

電離圏では名前のとおり分子は電離しておりイオンも磁気モーメントを持ち、

J. Plasma Fusion Res. Vol.82, No.11 (2006)7

https://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2006_11/jspf2006_11-762.pdf

より

図8:電離圏におけるイオン

ここで生成される酸素イオンの大半が常磁性イオンです

 

従いまして、空気(酸素)が存在する対流圏・成層圏から酸素イオンが存在する電離圏の大半が常磁性である、事になります

 

5.オゾン分子も常磁性

昼間に発生するオゾン分子も常磁性です

太陽紫外光により複数の酸素分子より生成されるオゾン分子は、オゾン分子同士で共鳴状態という振動状態にあって、これが常磁性・棒磁石の役割を果たしています Ozone - Wikipedia

図3と図4にオゾン存在領域が示されており、それは約11km - 約50km です

 

まとめ:

1.磁力線最高高度が約24kmであるグアムGUAは、磁力線の大半が常磁性である空気(酸素)とオゾン層を通過しますのでLT昼間に北方磁場最大を観測します

図9:2024年6月20/21/22日GUA北方磁場強度の変化

 

2.磁力線最高高度が約615kmであるサンファンSJGも、磁力線の大半が常磁性である空気(酸素)とオゾン層と酸素イオンを含む電離圏を通過しますのでLT昼間に北方磁場最大を観測します電離圏約615kmまでであれば電子ジャイロ運動は機能していない仮定あり)

図10:2024年6月20/21/22日SJG北方磁場強度の変化

 

3.酸素は植物光合成が活発になる昼間、オゾンも太陽紫外線が強くなる赤道上空の昼間、酸素イオンも電離圏における光解離が活発になる昼間、に大量発生しますのでGUAやSJGといった低緯度においてはLT昼間に北方磁場強度最大値を観測するのです

 

4.仮定電離圏約615kmまでであれば電子ジャイロ運動は機能していない)は間違っている可能性もあり、検討は続けてまいります

 

 

いや〜、、、長くなりました!お付き合い頂き本当にありがとう御座います

心より感謝です m(_ _)m