12月度その23:基礎知識を磨きましょう ➡ 磁場中の荷電粒子から、電磁イオンサイクロトロン波まで!
さて、基礎知識をブラッシュアップする時間です
キッカケは、人工衛星「あらせ」が観測した「電磁イオンサイクロトロン波:EMIC」に関する複数の記事が目に付いたからです
オーロラ原因とされています
そこで、この辺りを少し学んでおこうと、、、
お付き合い頂ければ幸いです m(_ _)m
結局は、磁場中における荷電粒子(プラズマ)の立ち振舞に絞られるのですが、まずは、プラズマ物理 - Wikipedia の 磁場中の荷電粒子の運動 より:
プラズマ中では荷電粒子に対する粒子間の個々の衝突の影響は小さく、荷電粒子の運動はまずは外から加えられた電磁場とプラズマ自身のつくり出す電磁場の作用により定まる。従ってプラズマの振舞いの理解には電磁場中での荷電粒子の行動を知ることが基本になる。
旋回運動
一様定常な磁場中では荷電粒子は磁場と速度の双方に垂直な力、ローレンツ力を受けるので、磁場に垂直な方向に円運動する。その際イオンと電子では荷電の符号が逆なので、旋回の向きも逆になる。この運動をサイクロトロン運動ともいう。
このサイクロトロン運動(私はジャイロ運動と称する事が多い)の回転数(振動数)をサイクロトロン振動数、回転の半径を旋回半径と称する
サイクロトロン振動数は、質量の小さい電子の方がイオンのよりもはるかに大きい
旋回半径は、同じ温度ならイオンの方が電子よりはりかに大きい
実際の磁場中のプラズマでこれらの量の大きさを考えると、イオンと電子のいずれもサイクロトロン振動数は非常に大きく、旋回半径は非常に小さいことがわかり、どちらも磁力線に強く巻き付いて運動するという描像がよい近似で成り立つ。とくに電子はイオンよりはるかに小さい半径ではるかに速く旋回している。
ドリフト
磁場 B に垂直な電場 E がかかると、荷電粒子の円軌道の半分では加速されて旋回半径が大きくなって、旋回中心が粒子から遠ざかる。そして反対側へ来ると減速され、旋回半径が小さくなり、旋回中心が粒子に近づく。こうして旋回中心はいつでも減速側に動き、粒子自体も一方向に移動する。この磁場に垂直な旋回中心の移動をドリフトといい、その速度をドリフト速度という。粒子自身も磁場に垂直にはドリフト速度で移動する。
なるほど〜、プラズマは、磁場があれば旋回運動を起こし、旋回運動を起こしたらドリフトする、訳だ!
この場合のドリフト速度 vd は 荷電粒子の種類、速度に依存しないのがその特徴である。
速度とは、荷電粒子の速度であり荷電粒子がいかに高速運動していようとも掛かるドリフト速度には関係ない、という事である
要するに、ドリフトする速度は、その場における電場と磁場の強さだけで決定されるのである
ここの記述はなかなか難しい、是非、直接Wikiをご参照願いたい!
磁気モーメント
磁場中の荷電粒子は磁力線の周りに円軌道を描いて旋回しているので、遠くからはそこに円電流があって、それに伴う磁気モーメントがあるように見える。その磁気モーメントは向きが磁場と逆方向のベクトルであって、
という事で、背景磁場を弱める方向の磁場ベクトルを生成するのである!
従って、電離圏において昼間太陽光により電離が促進されプラズマ密度が上がると、螺旋運動に伴う磁気モーメント生成により磁場強度は弱められるのである
そうして人工衛星「あらせ」の成果です
2021年7月14日発表の:
宇宙空間で電波を生み出すイオンの分布を発見 ─ 科学衛星「あらせ」の観測と解析から ─ | 宇宙科学研究所
より:
宇宙空間に存在する電子とイオンからなるガス「プラズマ」中では、様々な電波が自然発生することが知られています。
で、
名古屋大学宇宙地球環境研究所の小路真史特任助教、三好由純教授、宇宙航空研究開発機構の浅村和史准教授を中心とする国際共同研究グループは、「あらせ」衛星の観測データを使って、電波とイオン間のエネルギー交換とイオンの運動の分布の変化を特定することを可能とする新しいデータ分析手法を開発し、宇宙空間に発生する電波の一種である、電磁イオンサイクロトロン波が発生する際にイオンの運動の分布がどのように変化するかをはじめ明らかにしました。
ここで、
「電磁イオンサイクロトロン波動」は、周波数1ヘルツ程度の電波で、近年、地球を取り巻くように存在する放射線帯の高エネルギー電子の分布を変動させる原因の一つとして注目されています。
であって、EMIC発生の様子を示す図は、
図1:EMIC生成の原理
即ち、磁力線に巻き付いた荷電粒子(ここではイオンだから陽子だろう)は円運動をするから、その際に電磁波を放出する
その電磁波の周波数は1Hz程度との事である
上の図を見ると、EMIC周波数が減衰する場合と一定の場合の巻き付き方があるようだ
上記資料よりは少し古い、2019年12月2日発表の:
オーロラを発生させる高エネルギー電子が大気圏に降り注ぐ仕組みを解明 ~成層圏オゾンの破壊を誘発する原因の謎解きが一歩前進~│研究成果│国立極地研究所
には、オーロラとの相関を示す内容が記載され、
国立極地研究所(所長:中村卓司)の田中良昌特任准教授、西山尚典助教、門倉昭教授を中心とする、金沢大学、名古屋大学宇宙地球環境研究所、東京大学、東北大学、JAXA宇宙科学研究所、電気通信大学などの研究グループは、地上と科学衛星の同時観測により、地球周辺の宇宙空間で生まれる電磁波が原因となって南極、北極の上空の深く、すなわち成層圏近くまで高エネルギーの電子が降り注いできていることを世界で初めて明らかにしました。
図2:オーロラ観測
ここの動画が凄い!
スクリーンショットを上の図2に示します
説明文によれば、
動画1:(上):アイスランドのフッサフェルの全天カメラで観測されたオーロラ。(下)あらせが観測した高周波帯(0.1~10kHz)の電磁波の強度。宇宙空間で電磁波コーラスが観測された4:45~5:32に、地上で脈動オーロラが観測された。(国立極地研究所ホームページ:https://www.nipr.ac.jp/ で公開。)
あらせが観測した1Hz程度の電磁波が、EMICである、という事になるのでしょう
この論文では、高エネルギー電子の降り込みをオーロラ原因としています
オーロラ原因は、降り注ぐ高エネルギー電子なのか高エネルギー陽子なのかミックスなのか、追ってゆく必要があります!
コメントバック
リオ同志(id;ballooon)!
コメントありがとう御座います、感謝なのです
>電磁波コーラス・・コーラスΣ(゜ロ゜;)?なんでしたっけ?
>早朝に鳥の鳴き声みたいなのもコーラスとかって言いませんでしたっけ?
そうです!
>自分の過去記事を読みました!2019年1月のブログでした。
そうです!
私もコーラス波の存在を知ったのが、この同志の記事、でしたから!
>『なんでも、最近の研究成果で、この「コーラス波」という電磁波と、
そうです!
プラズマ物理 - Wikipedia によれば、
外部磁場方向に進む横波は電子およびイオンの旋回運動と結合するのでさらに複雑に振る舞う。
まず、横波は一般に電場ベクトルの方向が円周上に回る2つの円偏波の波に分解され、
イオンの旋回と同方向に回る左円偏波の波と、⬅ 電磁イオンサイクロトロン波
電子と同方向に回る右円偏波の波とに分類される。⬅ コーラス波
と、かなり複雑です
いずれにせよ、電磁イオンサイクロトロン波とコーラス波は対比されるものだったのでした
磁力線と同方向に陽子と電子が移動する事はないだろう、
移動するとすれば互いに逆方向だろう
磁力線にトラップされた(凍結された)陽子は地球北極へ、電子は地球南極へ、移動するで良いのだろうか?
などという事を考えております
以上でした
コメバック終わり
以上、お付き合い頂き誠にありがとう御座います
感謝です