なぜ地球磁極は逆転するのか?

太陽黒点数/オゾン全数/エルニーニョ/太陽活動と米国日本の地磁気変動を追います!

6月度その19:磁気嵐と地磁気変動を考える時 ➡ アルヴェーン波と磁場の凍結について調べておこう!

まず、アルヴェーン波ですが、これが難しい!!!

例えば アルヴェーン波 - Wikipedia には

アルヴェーン波とは、磁気流体波の一種で、ハンネス・アルヴェーンによって発見された。磁場中のプラズマの中を伝わる横波で、磁場と垂直に電流が流れたときに発生する力(磁場の接戦応力と見ることもできる)を復元力とする。磁場の方向に伝播する傾向にあるが、磁場と斜めの向きにも伝わりうる。

とありますが、これがスグ理解出来る人はプロかセミプロの方でしょう

私は「太陽コロナ温度が、太陽表面6,000度に対して、100万度を超える高温になるのはアルヴェーン波によるエネルギー搬送が行われるからである」と理解していました

コロナ - Wikipedia によれば

太陽コロナは、太陽の外層大気の最も外側にある、100万ケルビン (K) を超える希薄なガスの層である

図1:コロナループ

加熱の原因は、

プラズマ中を磁力線に沿って伝播するアルヴェーン波によって太陽表面のエネルギーが上空に伝えられているとする「波動加熱説」

が有力との事である

ま、太陽表面の事象ですから、地球には関係ないだろう、と思っていました

 

一方、磁場の凍結の方ですが、

磁場の凍結 | 天文学辞典 には

電磁流体力学によれば、電気伝導度が十分に高い(すなわち磁気拡散が小さい)流体においては、流体素片を貫く磁力線が、流体とともに動くようにふるまう。この状態のことを、磁場(もしくは磁力線)が凍結しているという。電気伝導度が低く(すなわち磁気拡散が大きく)なると、凍結が解けて磁力線が流体をすりぬけるようになる。

とあります

これもプラズマ中の事象でして、電気伝導度が十分に高いとは荷電粒子が十分にあるプラズマ状態、磁気拡散が小さいとは磁力線が広がり得ない状態で、このような状態で磁力線はプラズマ流体とともに動く(プラズマにロックされる)という事です

こちらの方がアルヴェーン波より理解しやすいと思いますが、私は「太陽コロナ爆発の時には、荷電粒子が大量にあるので、太陽から地球まで磁力線は凍結されプラズマと一緒に到達するのだろう」程度に考え、これも太陽と地中磁気圏の間の問題、と捉えていました

 

しかし、ここに来て電離圏です、それも磁気嵐時の電離圏ですから大量の荷電粒子が飛来しています!

磁気嵐時の電離圏においてアルヴェーン波や磁場の凍結は発生しているのだろうか?発生しているとして、それは地磁気変動やオーロラ発生にどのうよな影響を与えるのだろうか?という疑問が湧いてきます

そこで本日は「磁場中のプラズマを伝搬する波」の一種であるアルヴェーン波と「磁場の凍結」について調べたいと思います

 

お付き合い頂けますよう、よろしくお願い申し上げます

 

 

1.磁場中のプラズマを伝搬する波

まず我々の身近にある横波と縦波ですが、

【縦波・横波】正しい縦波はどっち? | 自由研究におすすめ!家庭でできる科学実験シリーズ「試してフシギ」| NGKサイエンスサイト | 日本ガイシ株式会社

よりまとめれば、

身のまわりの波は縦波・横波のどちらでしょう? まず水面の波は、上下の変化が水平に伝わるので横波です。 音は、振動が空気などの密度の変化として伝わるので縦波です。 光や電波などの電磁波は、電気と磁気の変化(電場と磁場の振動)が直角に組み合わさった横波です。

と実に簡潔明解です!

空気中の横波については、名古屋市科学館 | 科学館を利用する | 展示ガイド | フロアマップ | 縦波と横波 より

空気は酸素や窒素の分子が自由に飛び回っています。ロープなどの固体ならば揺れは伝わりますが、バラバラでお互いに分子がつながっていない空気では揺れは伝わりません。つまり空気では横波が生じないのです。

であって、岩石や金属といった固体では縦波と横波が発生し、身近な例として地震を挙げています

地震は地面の揺れが波となって広がっていきます。地震は縦波と横波の両方が発生します。そして、縦波は横波よりも伝わる速度が早いという特徴があります。地震の縦波はP波と呼ばれて、大きな揺れが来る前のカタカタ揺れると表現されることが多い初期微動がそれにあたります。横波はS波と呼ばれ、初期微動の後の大きな揺れがそれにあたります。 

PはPrimary(第1)、SはSecondary(第2)の意味です

 

ではプラズマ状態にある磁場にはどのような種類の波があるのかですが、アルヴェーン波と縦波があり縦波には高速と低速の2種類があります

このプラズマ状態における磁場の波は、磁場と直交する電流が存在する時に発生します

東京都立大学さん「電磁流体力学波」

https://aeroastro.sd.tmu.ac.jp/hydrodynamics/main/colums/cfd-heat/MHD-wave.pdf

によれば(これメチャクチャ数式が出てくるので)結果を図示致しますと、

 

図2:磁場と直交する電流が流れた時プラズマ中に発生する3種の波(アルヴェーン横波と高速磁場音波fastと低速磁場音波slow)

x 軸方向に一様磁場が印加される場合の β 1 での位相速度図(音速で規格化)

音速とは磁場音速で、βはアルヴェーン速度/音速の比

位相速度とはアルヴェーン波であれば凹凸波の凸の進む速度、音波であれば粗密波の密の進む速度(凹でも祖でもOKですが)

X軸が磁場の方向で、磁場と直交する電流が存在する時、ですから例えばY軸を電流の流れる方向とします

磁場音速で正規化した位相速度ですからX切片=1がアルヴェーン波速度最大の1、低速音波と高速音波が入れ替わる点でもあり低速音波はここで速度最大の1、高速音波はここが最低速度の1、となります

磁場方向であるX方向からθ度傾いた方向へも波は伝搬し、図2のθで示される線の切片が内側から順に低速音波、アルヴェーン波、高速音波の位相速度となります

 

以降、磁場方向に進むアルヴェーン波のみを扱います

 

さて、重要なのはアルヴェーン波の発生条件です

どの程度の電気伝導度でどの程度の磁場強度であればアルヴェーン波は発生するのか?

という事です、具体的な数値が欲しい所です

 

アルヴェーン波 | 宇宙物理メモ より、一部要約させて頂き、

磁気気体中を磁場に沿って位相速度

   Va = B / (4πρ)^1/2

で伝搬するアルヴェーン波が存在し、この位相速度は

   Va = 2.8 x 10^5 (B / 1μG) (n / 1cm^-3) [cm/s]

となり

銀河団プラズマの典型的な値から、銀河団プラズマではアルヴェーン速度は約3km/secとなります。

とあります

 

大阪大学大学院理学研究科さんより

https://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2019_12/jspf2019_12-615.pdf

宇宙最大の天体である銀河団には,温度が∼108 K,密度が∼10−9 m−3 という希薄なプラズマが満ちている

これらの式と値から銀河団プラズマにおける平均的な磁束密度はcgs-Gガウス表記で:

          3 x 10^5  = 2.8 x 10^5 (B / 1μG)(10^-9/10^6/10^-3)

                              3  = 2.8 x (B / 1μG)

                              B = 1.07 μG

となり、mks-Tテスラ表記ですと:

                              B = 1.07 x 10^-10 T = 10.7 nT

となります、何となくそれらしい値が出てきました!

これは:

銀河団の平均的なプラズマ荷電粒子数はm^3当り10^-9個程度で、やはり銀河団の平均的な磁束密度は10.7nT程度であるから、流れているアルヴェーン波の位相速度は約3km/sec程度である

というのが説明順番です(異なる資料から別々に値を引っ張ってきたので最後に磁束密度が出た!)

そして知りたいのはアルヴェーン波が運ぶエネルギー量なのです!

 

 

2.磁場の凍結

磁場の凍結に関しては、画像を含む良い記事が見当たらない

再度になりますが 磁場の凍結 | 天文学辞典 の記述は簡潔にして素晴らしい!

電磁流体力学によれば、電気伝導度が十分に高い(すなわち磁気拡散が小さい)流体においては、流体素片を貫く磁力線が、流体とともに動くようにふるまう。この状態のことを、磁場(もしくは磁力線)が凍結しているという。電気伝導度が低く(すなわち磁気拡散が大きく)なると、凍結が解けて磁力線が流体をすりぬけるようになる。

一番近いイメージかな?と思うのがNASAの磁気リコネクションに関する動画でMMSという衛星4基が3次元解析を行う(1基はスペア)、0:35分に磁気嵐で飛来した太陽風プラズマを地球磁力線が捉え、プラズマ密度が高いので地球磁力線がプラズマに凍結されたイメージが出ている(図3)

図3:NASA Magnetic Reconnection より0:35

右回転と左回転があるのは陽子と電子だろう

 

また1:47辺りにも地球磁力線に沿って移動するプラズマイメージがある

図4:1:47

1:47辺りを是非動画で見て頂きたい、地球は自転しているが地球磁力線は回転していないのが良く分かります、まぁ、NASA動画ですから当然といえば当然ですが

 

図5:動画 NASA Magnetic Reconnection

youtu.be

 

3.考察

A:アルヴェーン波は磁力線に沿って進む、磁力線を横波化しているイメージである

この横波が伝搬するエネルギーは磁場エネルギーだろう

一方、磁場の凍結状態で、磁力線は荷電粒子プラズマと一緒に(凍結されて)進む

この両者は同時に同じ磁力線で存在するのか?

しないだろう

 

B:図で示してみる

電離圏、例えば高度125km辺り、磁気嵐時にリングカレントJが発生している空間を想定してみよう

図6:磁力線と磁気嵐時リングカレントとアルヴェーン波

飛来するプラズマ空間中で、磁力線はリングカレントと直交しているので磁力線方向に横波のアルヴェーン波を発生させ、磁力線横波波動にてエネルギーを着地点に運ぶ

アルヴェーン波はプラズマ粒子そのものは運ばない、あくまでも磁場エネルギーの振動で、この場合は地球磁場エネルギーの伝搬だろう

図2に示されているようにアルヴェーン波は反対方向(南)へも伝搬する

 

今度は磁気嵐時のバンアレン内帯と外帯の中間域、赤道上空7,500km辺りの空間で、かつ高緯度な空間を想定してみる(リングカレント影響の少ない空間)

ここは内帯や外帯に比べればプラズマ粒子の少ない空間である

図7:磁力線とプラズマ粒子と磁場の凍結

ここに動画図5で示されたような、夜間プラズマシートにて発生した磁気リコネクションによるプラズマ爆発で高エネルギープラズマ粒子(恐らく陽子だろう)が飛来し、一部は外帯にてトラップされてしまうが多くは生き残って中間域に到達し、特に磁気嵐の時には高濃度なプラズマ空間を形成すると考えられる

そこで高濃度なプラズマ空間に遭遇した磁力線はプラズマ粒子と凍結され、プラズマ粒子を着地点へ運ぶ

 

両者の違いは、リングカレントがある(アルヴェーン波)か無いか(磁場の凍結)、プラズマ粒子を運搬しないか(アルヴェーン波)かするか(磁場の凍結)である

 

C:これらの事象は地上観測点で観測できるだろうか?

なかなか難しいのでは?というのが現時点の感想である

磁気嵐の場合を想定する

磁気嵐の時にはリングカレントが流れるので中緯度/低緯度の地球磁場は反作用で減衰する(と言われている)

減衰する地磁気強度の中からアルヴェーン波によるエネルギー増加を識別する事は無理だろう

ここで本ブログ観測では低緯度(サンファンSJG)では磁気嵐時に地磁気強度の増加を観測している

図8:2024/6/15から2024/6/17UTのSJGにおける地磁気波形

SJG磁力線の赤道上高度は615kmである

リングカレントが大量に流れているであろうとされる高度125kmに比べればだいぶ高いがここしかないだろう

分解能を上げる必要がある、現在は1分単位の平均値を磁場強度として採用しているが、これを秒単位にする必要がある

ダウンロードできるのは1日24h程度だろう

 

では磁場の凍結は観測できるのかどうか?

なかなか難しいと思います

まず観測点では磁場強度を観測しており飛来するプラズマ粒子の数なりエネルギーを観測しているわけではない

加えて凍結磁場にロックされて飛来するプラズマ粒子は、オーロラ発光して消滅してしまうだろうから

 

 

長くなりました

以上、お付き合い賜り、誠にありがとう御座いました

深く感謝です m(_ _)m